US Extra Class 受験体験記

日本でも、US Extra Classを取得しますと、1アマ相当として局の開局ができます。 今まで、和文がネックで1アマを受験しない(できない)方も多かったと思いますが、 日本の1アマも最近は和文の試験がなくなったようですので、"1アマ相当"としての 取り扱いを期待してExtra Classの受験をする旨味は、殆ど無くなっていると思います。
しかし、アメリカは相互運用協定を締結している国が多数ありますので、海外運用を 考えている方で、FCCの試験を受験される方は、まだ多くいらしゃることと思います。
受験の記憶が鮮明なうちに受験体験を書いてみたいと思います。

私は、96年 6月に社命留学で米国に来たのですが、こちらに来て約 1年、アメリカに 持参した相互運用協定による運用許可(Reciprocal Permit)の有効期限があとわずかに なってしまい、5月初旬に米国のアマチュア無線の試験を受験することにしました。

以下、簡単にこちらの試験制度について説明します。

License Class Test Elements 試験内容
Novice Class Element 2
Element 1A
30問のマルチプルチョイス
5WPM (25字/分)のCW
Technician Class Element 2
Element 3A
55問のマルチプルチョイス
(Element 2が30問, Element 3が25問)
Technician-Plus Class Element 2 + 3A
Element 1A
Technicianと同じく55問のマルチプルチョイス
5WPM (25字/分)のCW
General Class Element 2 + 3A + 3B
Element 1B
Element 3B = 25問のマルチプルチョイス
13WPM (65字/分)のCW
Advanced Class Element 2 + 3A + 3B + 4A Element4A = 50問のマルチプルチョイス
Extra Class Element 2 + 3A + 3B + 4A + 4B
Element 1C
Elemet 4B = 40問のマルチプルチョイス
20WPM (100字/分)のCW

ちょっと、ごちゃごちゃしていますが、要は、CWの試験が3レベル(1A, 1B, 1C)、 筆記が5レベル(2, 3A, 3B, 4A, 4B)です。
筆記は、一番易しいElement 2から順番に受験しなければいけません。 CWは、一番遅い1Aから受験する必要はありません。 いきなり、20WPMの1Cから受験することも可能で、これが合格なら下のレベルのCWを受験する必要はありません。
ですから、CWを20WPMのCW (Element 1C)で受験して、学科のElement 2を受験してNovice Classを取得するということも 可能なのです。 一度、各資格で要求されるCWのレベル以上を合格してしまえば、ライセンスをアップグレードする場合も1年間は、 CWの試験を受験しなくて大丈夫です。
また、以前はアメリカには日本の4アマに相当するNo Codeのクラスがありませんでしたが、 91年からTechnician ClassがNo Codeのクラスになりました。 これに伴い、従来のCWが必要とされていたTechnician Classは、Technician-Plus Classになりました。 新しいTechnician Classは、学科がNoviceよりも多く課されています(Element 3A)が、 レピータ使用などを目的としてハムの資格を取る人が多いようで、NoviceよりもTechnicianを受験される方が多いように思われます。


私の場合、留学先大学の学年末試験後、急に思い立って受験したため、試験の申し込みをしたのが試験の前日夕方でした。
(注:試験は、突然試験場を訪問してもOKな場合と事前のアポは不要な場合があります)

こちらの筆記試験は、すべてマルチプルチョイスです。また、全て問題プールと言われるものの中から出題されますので、 極端な話、全問丸暗記してしまえば合格できてしまいます。

各エレメントの問題プール数は、以下の通りです。

Element 2 ----- 350題
Element 3A ---- 295題
Element 3B ---- 290題
Element 4A ---- 582題
Element 4B ---- 450題

(注:Element 2 と3Aの問題プールは、97年7月から少し増えています)

約2000題の問題を丸暗記してしまえば、Extra Classまでパスできてしまうことになりますが、 さすがに全問1日で丸暗記というのは、きついものがあるでしょう。
ただ、内容は、そんなに難しくありません。 私は、記述式試験時代の2アマですが、2アマ程度の知識があり、かつ、 無線&工作を実際にある程度やっている方ならば、問題プールを見て行かなくても、 General Classくらいまでは運がよければ合格できるかもしれません。 英語に問題がないのでしたら、おそらくTechnicianの問題までは、合格点は取れてしまうでしょう。

Advancedあたりになると、結構歯ごたえがあります。 関数電卓を持っていかないときちんとした値が求められないような工学系の問題が出たりします。

一例を示しますと・・・

What is the phase angle between the voltage across and the current through a series R-L-C circuit if Xc is 25 ohms, R is 100 Ohms, and XL is 100 Ohms?
(直列RLC回路のCのリアクタンスが25オーム、Lのリアクタンスが100オーム、Rが100オームの時のフェーズアングル求める)

XL>XCですから、インダクテイブ・サーキットになっています。
(Phase angle= p としますと) Tan p =X/R ですので、Tan p =(XL-XC)/R = 75/100 =0.75 となる角度pを求めなければなりません。
関数電卓がなくても、選択肢の不正解は大きく値が違いますので、典型的な三角形を書いて"あたりをつける"ことは可能です。
上の例ですと、p=36.9度ですので、正解の選択肢は、36.9 degrees with the voltage leading the current ということになります。
他の角度は、53.1度になっていますので、2等辺三角形でも書いてtan(45度)を計算してあげれば、あたりがつけられます。

dbの計算などもありますが、何も対数を持ち出すこともないようです。 無線をやっていれば、3db, 10dbなんて値が電圧比でいくつかはいつの間にか覚えているもんです。 この値の組み合わせでなんとかなるという気がします。

ただし、回路図もたくさん出てきて、この回路図の働きは?という類のものもありますので、簡単な回路図を見て 反応できないとちょっときついかもしれません。昔懐かしい、ピアースやハトーレ、コルピッツ発振器あたりは、 回路図みて区別がつかないレベルだと暗記に走るしかないかもしれません。

ちょっと脅かしのようになってしまいましたが、このあたりが解らない方でも、丸暗記すれば大丈夫です。 暗記しなければいけない数は、非常に多くなってしまいますが・・・

Extraは、後述しますが、少し特殊な試験のように思います。


一夜あけて・・・

約2000題の問題プールを一晩で見ようというのは、ちょっと無理がありました。 徹夜で問題集を見たのですが、Advanced Classの問題を眺め終わったのが、朝7時過ぎ。 試験開始は、9時でしたので、Extra Classの受験は見送る事になりました。 試験場について、「Advancedまで受験したいが、CWは、Extraで要求される1C(20WPM)まで受けさせてくれ!」と 言ってみました。

日本ならよくある話なのかもしれませんが、一日で、NoviceからExtraまで受験するような人は、 こちらでは殆どないようです。 他の受験者(15人程度)のうち、CWの試験自体を受験する人が私を含めて5人しかいませんでした(No CodeのTechnicianの受験者が多い)。 結局、試験官に「どちらにしてもExtraは受験しないのだから、もう一人受験者のある1B(13WPMのCW)と筆記を受けて、最後に時間があれば、1Cの試験をしよう」といわれてしまいました。 海外での受験経験がある方から、「一日でExtraまでなんていう"ガツガツ"した受験者は日本人くらいで、VE(ボランティア・エグザミナー)にとっては、 いい迷惑なのでしょう」と聞かされていましたので、あまり抵抗することもなく、それに従いました。

試験は、13WPMのCWの試験からでした(試験官の趣味?で必ずしもCWの試験から始まるとは限らない)。 「普段は、コンテストなどで、150字/分くらいは聞いてるから問題なし!」と思っていたのですが、 いざ筆記しようとすると結構焦るものです。1年以上、CWから離れていたせいもあるのかもしれませんが、 「ひいひい」言いながら筆記していました。どのクラスでもCWの受信は、5〜6分の受信です。 このうち、1分間1文字もミスなくコピーするか、受信後に渡される10題の問題に答えられれば合格です。 13WPMにもかかわらず、数文字取りこぼしてしまったようですが無事合格し、筆記もパスしました。 Advancedの問題を解いているころから、会場となっていた市民会館?に、次の会場使用を予約している 「おばさん集団」が会場設営に入ってきてしまい、結局、この日は、試験官から、「とてもCWの試験を受験する ような状況ではないから、1C(20WPMのCW)は、再来月の試験の時に受験しないか?」と言われてしまい、受験したかった 20WPMのCWは、受験できずに帰宅しましたが、物珍しい日本人がいきなりAdvanced まで受験したせいか試験終了後、 試験官から握手を求められてしまいました。

反省・・・

普段のQSOでも100字/分くらいコンテストともなれば、相当な速度でQSOしていたはずなのに、 13WPMで数文字とはいえ取りこぼしたのは正直ショックでした。
1年以上、CWを聞いていなかったこともあるのかもしれませんが、私は、CWの書取りに 大文字を使っていることも一つの原因かもしれません。 しかし、20年近く続けてきた"クセ"を直すのは、今から符号を覚える以上に大変です。 思い返してみると、普段は必要な部分しか書き取っていないですね。 ですから、試験で実際に長時間連続で記述してみるまで、13WPMがSolid Copyできない とは、思ってもみませんでした。今更ながら、少し筆記練習をする必要があるのかなぁ〜と考えてしまいました。
こんなことで、20WPMが書き取れるのか少々不安になり、ARRL発売のテープを聞いてみましたが、 20WPMになると結構取りこぼしをしてしまうようです。 ただ、Solid Copyしなくとも10個の質問のうち7つに答えられれば合格ですので、 いざとなれば、Solid Copyは諦めて、要点だけ書き取れればいいやで済ませてしまいました。
その後、何日かに1回、WEB上で試験問題を作ってくれるページ のCWを聞いたりしてみましたが、慣れてくると20WPMでも大文字で書けるようになるようです。 ただ、このWEBのCWは、明らかに遅いです。練習されるならば、22WPMで練習しないと実際の試験にあわないでしょう。
また、試験会場によっては、受信後渡される10個の質問が、マルチプルチョイスになっている所もあるそうです。 これならば、ボロボロ歯抜けの受信でもかけらがつながれば合格できてしまいます。残念ながら、日本も含め殆どは 質問の答えは、マルチプルチョイスではなく、筆記しなければならないようです。 (試験前に試験官に問い合わせてみると良いかもしれません)

Extra 受験

予定では、早くて8月か9月にExtraを受験するつもりだったのですが、 6月初旬に近くのハムショップでFCCの試験があることを知りました。 受験を思い立ったのが、試験当日の朝でした。Internetで試験会場を調べていたら、その日の午後に試験があることを発見。 急遽、その試験を受験することにし、朝8時過ぎから慌ててExtraの問題プールを眺めて、 試験場に乗り込みました。 さすがにExtra Classの問題プール全部を3時間程度で終わらせることは無理があります。 結局、すべての問題を見られずに会場に乗り込みました。 Extraの問題は、他のクラスと比べるとかなり特殊な感じがします。スミス・チャートやロジック・サーキットなど 私にとって未知の部分が結構ありますし、難しくはないのですが例えば、サンスポット低下時に国際コンテストで どうオペレートするのが良いか?とか2mでのEMEの交信方法、○dbの利得があるアンテナの電力半値角の計算など かなり実践的な問題が多くみられます。 私の場合、とにかく全く知らない部分だけなんとか問題と今までの無線生活で未経験のサテライトやデジタル通信関係の 問題を眺め、わかりそうな所は思いっきり飛ばしてしまいました。 試験場についたときは、不勉強なので不合格でもやむを得ないと思っていたのですが、実際にはこの程度の勉強でも 結構できていたようです。 (合格者は、合否しか教えてもらえないので正確な正当数は不明ですが、採点している時の様子をみていたところ 2カ所にチェックを入れていたので、多分2問間違えだと思います)
気にしていたCWですが、前回の試験会場とは異なり(前回は、ハンディー・ラジカセからのテープ音受信)、 ヘッドフォーンをして受験することができ、かなり集中して受信ができました。 そのおかげか、手が疲れて数文字書き落とした程度で無事合格することができました。

結局、13WPMと20WPMとをそれぞれ1回受験したわけですが、質問事項は似た物が多いようです。送信される電文は、全てQSOの 形式ですので(Q符号などの略号は、少ないため平文に近い感じですが)、 Solid Copyに自信がない方は、以下のような項目が質問対象になると想定して受信されるとよいのではないでしょうか。


・送信者のコールサイン(私の場合、13WPMでも20WPMでも送信者のコールがK8SZ/6のような/*というのがついていました)
・受信者のコールサイン
・相手 or 自分の名前
・QTH(州の名前 or 市の名前 どちらの試験でも"市名,州名"の形式で送信されていました)
・シグナルレポート(もらったRST Report あるいは送ったReport)
・天気(天候、気温(全て華氏でF Degreeでした)etc)
・何級の免許をもっているのか(Extra, Advanced,etc)
・オペレーターの年齢
・使用リグ(メーカー名、出力 使用RIGをどうやって入手したか)
・使用アンテナ(アンテナのメーカー名(私の時はクッシュクラフトが出ました)や形式)
・オペレターの職業
・これからQRTする理由(ランチのためにQRTする等)
・免許を取ってから何年たつか。西暦何年に免許を得たか

質問事項は、以上のような内容でした。


Extra CW Sample Test

実際の受信時間の半分くらいしかありませんが、20WPMのCWをReal Audioにしてみました。 一度試しに聞いてみてください。(ここでは、コールサインが繰り返し送出されていますが、私は試験会場で 一度も繰り返しているのを聞いていません。最初と最後に一回ずつです。 ex JM1SZY DE K8SZ/6 BT......JM1SZY DE K8SZ/6 AR また、実際の試験では、VVV VVVから始まっています)

Sample TEST 1


Questions for sample test 1

1 What was the receiver's callsign?
2 What was the name of receiving operator?
3 What was the name of sending operator?
4 What was the signal report sent?
5 What was the QTH of the sending operator?
6 What was the name of transceiver manufacture?
6 What was the sender's antenna?
8 How did the sender describe the weather?
9 How many years had the sending operator been amateur?
10 What is the occupation of the sender?

Sample Test 1の解答と送信文は、こちら


Sample TEST 2


Questions for sample test 2

1 What was the sender's callsign?
2 What was the receiver's callsign?
3 What was the signal report?
4 What was the sender's name?
5 What was the receiver's name?
6 What was the sender's state?
7 What was the sender's city?
8 What was the sender's antenna?
9 How did the sender describe the weather?
10 What is the occupation of the sender?

Sample Test 2の解答と送信文は、こちら

Written by JM1SZY / K8SZ, Akira Kumabe