FT-920 2.4kHz OEM SSB filter 交換方法
FT−920をお持ちの方で、デフォルトのSSBフィルターの切れが甘く、混信を受けやすいと
感じられた方も多いのではないでしょうか。
高級機なみにフィルターを切り替えたりできればよいのですが、所詮、お手頃値段帯の920です。
あまり多くは望めません・・・
デフォルトのSSBフィルターの特性を見れば一目瞭然なのですが、スカート特性が悪く、
80dbのレンジで計測した結果を見ても、flybackがかなりあるようです(フィルター特性
対比グラフ参照)。
International Radio(以下、INRADとします)という会社が、以前よりFT-920用の250Hzと400HzのCWフィルターを発売していたのですが(ヤエス純正の920用CWフィルターは500Hzの一種類のみ)、98年4月13日からSSBフィルターも正式に販売を開始しました。運良くこれを入手することができましたので、そのインストール方法を簡単にご紹介します。
(注)SSBフィルターのインストールは、デフォルトのフィルターを基板からはずさなければなりませんので、保証の対象外になります。
フィルター交換を実践する場合、あくまで自己責任で行ってください。
1.OEM フィルターの特性
INRAD社の取説付属の説明とグラフによれば、OEMフィルターの
特性は、2450Hz(-6db)、4300Hz(-60db)となっていますので、シェープ・ファクターは
4300/2450=1.75くらいのフィルターです。
下のグラフの外側のカーブがデフォルトの
SSBフィルターの特性です。
(すその方で大きくflybackがあるのが、おわかりでしょう)
2.INRAD社フィルターの特性
INRAD社からは、今回、2種のSSBフィルター(1.8kHzと2.1kHz)
が発売になっていますが、今回入手したのは、2.1kHzのフィルターです。
上のグラフの内側のカーブが、2.1kHzフィルターの特性です。グラフ及び取説から
スペックを見ますと、2100Hz(-6db)、3150Hz(-60db)ですので、シェープファクターは、
3150/2100=1.5になっています。
80dbレンジで見ている限り、OEMフィルターに見られるような大きなFlybackはない
ようです。
1.8kHzフィルターの特性はわかりませんが、同様にシェープファクターが1.5となって
いるようですので、1800Hz(-6db)、2700Hz(-60db)ということでしょうか?
3.狭帯域フィルターの是非
フィルターの宣伝をしておきながら、狭帯域フィルターの是非を論じるのは疑問でも
あるのですが、フィルターを入れれば必ずいいというものでもないと、私は思って
いますので、一言付け加えます。買ってからでは取り返しがつきませんので・・・
フィルターを導入すれば、それなりに選択度はあがりますので、
計算上のS/Nはかなり改善されると思います。
ただし、狭帯域フィルターを入れた場合、
自然な音質を損なう・硬い音になってしまうことは、
頭に入れておいてください。
最後に受信音を聞くのは人間であって、機械ではありません。
広帯域のフィルターの方が、自然な音できくことができ、了解度が高いということもあるのです。
個人的には、最近はやりのDSPフィルターもあまり好きではありません。
最近のDSPフィルターはよくなってきたと思いますが、DSPフィルターを
入れない受信音の方が、よっぽど了解度がよかったという経験も数知れないからです。
外付けや内蔵のDSPフィルターは、邪魔なら使わなければよいだけですが、
今回のは、OEMフィルターとの入れ替えで、常時入れっぱなしになってしまう
ことを了解しておいてください。
4.取り付け方法
取説にきちんとインストールの方法が書いてありが、INRAD社は
アメリカの会社ですので、説明は全部、英語になっています。
以下、取説に従った取り付け方法を写真を交えて説明します。
920のサイドパネルのねじを4つ緩め(はずさない!)、下部のパネルの6つのネジを
はずして、下部パネルをはずすと写真のようなメイン・ボードが見えるはずです。
(920の日本語取説をもっていないのですが、CWフィルターやFMユニットの
取り付け方法の中に下部パネルのはずし方が書いてあると思います)
オプションフィルターが何もない方は、写真の一番上の部分に黒いプリントのある
デフォルトのSSBフィルターしかないはずです。
写真では、上から順に、SSBフィルター、CWフィルター、AMスルー・ボード(AM
フィルターが入る場所にスルーボードが入っています)、FMユニットの順です。
920のフロントパネルは、写真上部になります。
まず、緑で囲んだ部分にあるシールドボックスをはずします。
このシールドボックスは、3個のネジでとめてありますので、それをはずします。
ネジをはずしたあと、丁寧にシールド・ボックスを上の方に持ち上げてください。
シールドボックスは、差込式のコネクター1個でメインボードに取り付けられているだけです。
この状態が、シールドボックスをはずした状態です。
シールド・ボックスとメインボードとの結線は、つないだままでOKです。
この状態で、メイン・ボードを取り付けている12個のネジをはずします。
12個のネジのうち11個は、メインボードの周囲にそって取り付けられています。
残りの1個は、メインボードのど真ん中にあります。結線が束ねられている下に
隠れるようにあると思いますので、結線の束を少しずらして、はずして下さい。
メインボードを取り付けているネジをはずしたら、あとはメインボードの取り外しに
入ります。
920のフロントパネルを正面として、右側の結線の束(左の写真の緑で囲った部分)を
メインボードの取り外しの邪魔にならないように、写真のようにケースの右側にボードを
よけるように、上手く、ずらしてください。
写真では下部(FT−920のフロント・パネル側)を持ち上げます。
フロント・パネル側には、ディスプレーなどに繋がったケーブルなどがありますので、
無理矢理ひっぱりあげないように!
私は、写真のようにCWフィルターをはずして、デフォルトのSSBフィルターのケース
をつまみあげるようにして、基板の下に指をもぐらせて基板を持ち上げました。
リアー・パネル側のコネクター類が、蓋体からはずれるまで、基板の手前を持ち上げながら
フロント・パネル側に基板を引っ張ります。(リア・パネル側のコネクターを指で少し
押してあげると、はずしやすいと思います)
このメインボードは、上の写真の下部でしか、他のパーツ・基板等と接続していません。
リアー・パネル側には、他の基板等への結線はありません。(フロント・パネルへの
結線以外は、緑で囲った部分の下部でしか、他への基板の結線はありません)
リアー・パネルから、メインボードについているコネクター類が外れたら、今度は、
基板のリアー・パネル側に指を入れて、リアーパネル側をおこします。
左の写真は、基板をおこして、メインボードが組み込まれていたアルミのダイキャスト・
フレームに対して、丁度、直角になるくらいまで起こした状態です。リア・パネルから
出ていたコネクター類が見えるでしょうか?
これは、完全にメインボードをひっくり返した状態です。
緑で囲った部分がデフォルトのSSBフィルターが半田つけされている部分です。
SSBフィルターを取り付けている半田を溶かして、デフォルトのSSBフィルターを
引き抜いてください。
その後、INRADのSSBフィルターを空いた穴に挿入し、半田付けしたら完了です。
逆の手順で、メインボード等を元の位置にもどして作業完了。
私も結線がどう繋がっているのかわからないまま、おそるおそるはずしましたが、
作業時間は、大体30分程度でした。くれぐれもメインボードを痛めないよう、
注意して作業してください。
INRADのフィルターは、同社のWEBから
注文することができます。
JM1SZY / K8SZ
Akira Kumabe